家づくりに携わる私達からすれば“すれちがい家族”の現状と“個室・プライバシー重視の間取り”にミスマッチがあるのではということです。つまりこれだけ家族全員で過ごす時間が減っているにもかかわらず、個々に独立動線を確保するための廊下や、ドアを閉めれば100%プライバシーが確保される子供部屋が、家族のコミュニケーションの阻害要因となっているのではないでしょうか。
家族間の楽しいコミュニケーションを主題とした“サザエさん”や“ちびまる子ちゃん”において、平屋の旧来からの日本家屋をモデルにすることと、一人子の子供の夢を実現した“ドラえもんの家”が2階を子供部屋が専有し、1階で両親が就寝する個室重視の家を選んだことは、注目すべきことだと思います。
次の3つの間取りを提示します。
A:「サンデー毎日」1989年7月23日号より
C:横山彰人著『子供をゆがませる間取り』より
B:清家清著『現代の家相』(新潮社)より
問題行動のすべての原因が家の間取りにあるとまでは言えませんが、間取りがもう少し違ったものであれば最悪の事態は避けられたのではないかというのが、私達のこれからの住まいづくりにとって重要なポイントであると考えています。
いじめ、自殺、進学、ニート、不登校、子供のうつ病等、我が子の微妙な変化をいち早く親が気付いてあげられるような間取りが、まさに“すれちがい家族”を余儀なく強いられる現代社会において必要であると考えます。“ドラえもんの家”ではなく、“現代のサザエさんやちびまる子ちゃんの家”が今求められています。
おおげさに言えば、地域コミュニティや家族の再生がないと、“教育や美しい日本の再生”はなく、日本の最も大きなテーマであると考えます。